2023-10-25 都市史研究 10 (温井亨 東北公益文科大学教授) 2023-03-27 日伊文化研究 61号 (福村任生 建築史家、飯田市歴史研究所研究員) 2023-03-07 福井新聞 2023-02-26 日本農業新聞 2023-02-16 Forbes Japan(安西洋之 ビジネスプランナー ) 2023-01-08 日経COMEMO(安西洋之 ビジネス+文化のデザイナー) 2022-11-04 週刊読書人(山辺規子 奈良女子大学名誉教授・イタリア史) 2022-10-30 北海道新聞
それは、21世紀らしい美の誕生。
世界を魅了する屈指の景観の成り立ちを読み解く。
【2024年日本建築学会著作賞受賞】
イタリア・トスカーナ、オルチャ渓谷の田園風景。都市と田園が織りなす、人間と自然とが作り上げた「ありきたりの風景」は、2004年、傑出した文化的景観として世界遺産に登録されました。この出来事は、都市文明のパラダイムから解かれ、田園や農業が再評価される時代の到来を象徴し大変話題となりました。
この屈指の空間の成り立ちを、自然条件や大地を活かした人間の多様な営み(産業)、まちや田園にある居住地や建造物(の類型)、それらを結ぶ道のネットワーク、長年蓄積された歴史や伝統、文化、そして現代のセンスによる再生など、様々要素から「空間人類学」的に読み解き、テリトーリオが育んできたアイデンティティを描き出します。
*「『テリトーリオ』とは、一般に領土と訳される英語のテリトリーとは概念がかなり異なり、実にイタリアらしい言葉である。(中略)土地のもつ自然条件、あるいは大地の特質を活かしながら、そこを舞台に人間の多様な営みが展開してきた。農業、牧畜、林業、諸々の産業が営まれ、町や村の居住地ができ、田園には農場、修道院が点在し、これらを結ぶ道のネットワークもできる。長い時間の経過とともにそこに独自の歴史や伝統が蓄積され、固有の景観や地域共同体が生まれてきた。こうして成立する社会経済的、文化的なアイデンティティを共有する空間の広がりとしての地域あるいは領域が「テリトーリオ」なのである。(中略)風景とは様々な要素からなるテリトーリオの特徴が視覚的に表現されたものである。」
(陣内秀信「はじめに」より)
・空間人類学で読み解く、オルチャ渓谷の文化的空間 ・何故いま、オルチャ渓谷なのか 第1章 世界遺産オルチャ渓谷の概説 1 文化的景観としてのオルチャ渓谷 2 オルチャ渓谷というテリトーリオ 3 シエナ共和国のテリトーリオとオルチャ渓谷の地政 4 オルチャ渓谷のテリトーリオの地勢、地形・地質・水系 5 定住環境の形成 6 風景の伝統を残しつつ形成された田園 7 テリトーリオの再評価への歩み 8 テリトーリオ研究の軌跡 第2章 まちの空間構造 1 都市の総論 2 サン・クイリコ・ドルチャ San Quirico d'Orcia 3 カスティリオーネ・ドルチャ Castiglione d'Orcia 4 ロッカ・ドルチャ Rocca d'Orcia 5 ピエンツァ Pienza 6 モンティッキエッロ Monticchiello 7 モンタルチーノ Montalcino 8 サンタンジェロ・イン・コッレ Sant'Angelo in Colle 9 ラディコーファニ Radicofani 第3章 田園風景の構造 1 今日の田園風景の原型ができるまで 2 都市と田園の緊密な結びつき 3 風景のなかの多様な建造物 4 歴史が重層した田園風景 5 オルチャ渓谷の水系 6 オルチャ渓谷の自然 7 都市と田園を結ぶテリトーリオの暮らし 第4章 史料から読む田園風景の変容プロセス 1 中世の法令から見る農業と都市の景観 2 史料から読むオルチャ渓谷の田園 3 3つの事例地区に見る農業景観の変容 4 オルチャ渓谷開拓組合の計画 第5章 テリトーリオの再生へ 1 オルチャ渓谷の再生のシナリオ 2 地域資源を活かす動きの展開 3 ポデーレの再生―農業者と経営スタイルの類型 4 新しい定住様式の浸透 5 テリトーリオの再生とエノガストロノミア資源 6 オルチャ渓谷が踏み出した新たな一歩
陣内 秀信
Hidenobu Jinnai 1947年生まれ。法政大学特任教授。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・工学博士。イタリア政府給費留学生としてヴェネツィア建築大学に留学、ユネスコのローマ・センターで研修。専門はイタリア建築史・都市史。地中海学会会長、建築史学会会長、都市史学会会長を歴任。中央区立郷土天文館館長。
著書に『都市のルネサンス―イタリア建築の現在』(中央公論社、1978年)『イタリア都市再生の論理』(鹿島出版会、1978)『東京の空間人類学』(筑摩書房、1985年、サントリー学芸賞受賞)『ヴェネツィア―都市のコンテクストを読む』(鹿島出版会、1986)『都市を読む*イタリア』(法政大学出版局、1988)『都市と人間』(岩波書店、1993年)『イタリア都市の空間人類学』(弦書房、2015年)『水都ヴェネツィア―その持続的発展の歴史』(法政大学出版局、2017年)『都市のルネサンス〈増補新装版〉ーイタリア社会の底力』(古小烏舎、2021年)『水都 東京―地形と歴史で読みとく下町・山の手・郊外』(筑摩書房、2020年)ほか多数。
受賞歴にサントリー学芸賞、地中海学会賞、建築史学会賞、日本建築学会賞、イタリア共和国功労勲章、日本建築学会賞、パルマ「水の書物」国際賞、ローマ大学名誉学士号、サルデーニャ建築賞、アマルフィ名誉市民、アマルフィ・マジステル、ARGAN賞など。
植田 曉
Satoshi Ueda 1963年北海道生まれ。工学院大学大学院修士課程修了。一級建築士事務所風の記憶工場主宰。イタリア政府奨学金留学生としてローマ大学に留学。博士(工学、法政大学)。NPO法人景観ネットワーク代表理事。専門は文化的景観及び景観まちづくり、建築意匠。現在、北海学園大学客員研究員。北海道で二地域居住、循環型農業のCSAを実践。著書・論文・計画に『別冊造景1イタリアの都市再生』(共著・建築資料研究社)、『イタリアにおける都市・地域研究の変遷史』(法政大学出版局)、『中標津町景観計画』。
マッテオ・ダリオ・パオルッチ
Matteo Dario Paolucci 1971年ヴェネツィア生まれ。ヴェネツィア建築大学卒業。エディンバラ芸術大学で修復学を学んだ後、千葉大学大学院博士課程修了。博士(工学)。法政大学外国人招聘研究員として陣内研究室と共同研究を行う。専門は文化的景観及び修復学。農業景観研究の領域を開拓。現在、ヴェネツィア建築大学講師、法政大学エコ地域デザイン研究所兼任研究員。主な著書・論文に、Il restauro in Giappone : architetture, città, paesaggi (Aliena editrice)、“Rural landscape between conservation and restoration”, Urbanistica, No.120.
樋渡 彩
Aya Hiwatashi 1982年広島県生まれ。イタリア政府奨学金留学生としてヴェネツィア建築大学に留学。日本学術振興会特別研究員を経て、法政大学大学院博士後期課程修了。博士(工学)。専門はイタリア都市史。瀬戸内テリトーリオ研究にも取り組む。現在、近畿大学工学部建築学科講師。著書に『ヴェネツィアのテリトーリオ―水の都を支える流域の文化』(共編、鹿島出版会)、『ヴェネツィアとラグーナ―水の都とテリトーリオの近代化』(鹿島出版会)。主な受賞に地中海学会ヘレンド賞、前田工学賞、住総研博士論文賞ほか。