紹介
「都市ってもっと面白いはずだ!」 イタリア、スペイン、クロアチア、トルコの各都市、シリアのダマスクス、アレッポ、カイロ、チュニス、モロッコのフェズ、マラケシュ……歴史の蓄積をもち、計り知れぬ豊かさを秘めた地中海都市の迷宮を奥へ奥へ。地中海周辺の古代以来の高度な文明、多種多彩な個性豊かな文化、魅力あふれる建築や都市空間を読み解く。 限りなく多様で豊穣な地中海世界。東から西まで、豊かな自然と歴史の厚みを誇り、異文化が入り交じる地中海都市は、単純ではない。都市の原点として、いかにつくられ、魅力はどこから生まれているのか。平和で安定していた時代の「地中海都市論」にいま再び光を当てる。 (本書は品切れとなっていた『都市の地中海―光と海のトポスを訪ねて』(NTT出版、1995年)を改題、加筆、再編集したものです)
目次
【目次より】 序章 都市の基層 地中海世界の都市の基層を探る/広場の原点/広場の役割/計画都市と非計画都市/古代起源の都市と純粋な中世都市/中庭をもつ迷宮的空間/袋小路が作り出す迷宮的空間/水と結びつく聖地 Ⅰ 古代との対話 海を背景とする古代劇場/古代遺跡の中の町―スプリット/永遠の時を織り込むローマ/重層する聖域―シラクーザ/神殿、教会、大モスク―ダマスクス Ⅱ 異文化の混淆 楽園の構造―アルハンブラ宮殿/イスラームの都市の記憶/コスモポリタンな都市文化―パレルモ/旧ユーゴスラヴィアの悲劇/絶景の小都市―モスタール/自由の都市―ドゥブロヴニク Ⅲ 風土と民家 地中海が育んだ建築史/水と緑の町―ブルサ/カラフルな木造民家―サフランボル/立体的な斜面都市―マルディン/白く輝くトゥルッリ―アルベロベッロ/絶壁の都市―ピティリアーノ Ⅳ 迷宮都市からの発想 濃密な生きられた空間との出会い/迷宮に潜む計画性/観念としての迷路/現実に生きる迷宮/究極の迷宮都市―フェズ、マラケシュ/部分からの発想―ダマスクスとアレッポ Ⅴ 中庭の小宇宙 中庭型住宅の普遍性/ローマ時代の中庭―ポンペイ/イスラーム世界の様々な中庭/アラブの香りのパティオ―アンダルシア地方/天国の中庭―アマルフィ/隠す発想、見せる発想―ヴェネツィア/ルネサンスのパラッツォ―フィレンツェ/中庭の誘惑―ナポリ Ⅵ 水の戯れ カナートの発明―イラン/堂々たる地下水道―シエナ/水を引く都市、溜める都市/五感に語りかけるイスラームの都市 Ⅶ 劇場としての広場 広場という本質/イスラームの社交場、モスクとハーン/変幻自在のサロン、チャイハーネ/社交の場カフワ Ⅷ 聖と俗のトポス 神々のアクロポリス、市民のアゴラ/死者の豊かな世界/出迎える死者たち/墓地でくつろぐ/城壁の内と外―カイロ/謎の石塔ヌラーゲ―サルデーニャ/田園の教会―シリクア Ⅸ 水の聖域 地中海世界の信仰と水/ギリシア世界における水のトポス/サルデーニャに受け継がれる水の聖地/南イタリアに見る水上の宗教行列 Ⅹ 都市からテリトーリオへ イスラーム世界の政情の変化とフィールド研究の難しさ/「テリトーリオ」という視点/田園の価値の発見/ルネサンス都市フェッラーラの新たな見方/ポー川デルタ地帯の多彩な風景
著者
陣内 秀信
じんない ひでのぶ
Hidenobu Jinnai 1947年生まれ。法政大学特任教授。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了・工学博士。イタリア政府給費留学生としてヴェネツィア建築大学に留学、ユネスコのローマ・センターで研修。専門はイタリア建築史・都市史。地中海学会会長、建築史学会会長、都市史学会会長を歴任。中央区立郷土天文館館長。
著書に『都市のルネサンス―イタリア建築の現在』(中央公論社、1978年)『イタリア都市再生の論理』(鹿島出版会、1978)『東京の空間人類学』(筑摩書房、1985年、サントリー学芸賞受賞)『ヴェネツィア―都市のコンテクストを読む』(鹿島出版会、1986)『都市を読む*イタリア』(法政大学出版局、1988)『都市と人間』(岩波書店、1993年)『イタリア都市の空間人類学』(弦書房、2015年)『水都ヴェネツィア―その持続的発展の歴史』(法政大学出版局、2017年)『都市のルネサンス〈増補新装版〉ーイタリア社会の底力』(古小烏舎、2021年)『水都 東京―地形と歴史で読みとく下町・山の手・郊外』(筑摩書房、2020年)ほか多数。
受賞歴にサントリー学芸賞、地中海学会賞、建築史学会賞、日本建築学会賞、イタリア共和国功労勲章、日本建築学会賞、パルマ「水の書物」国際賞、ローマ大学名誉学士号、サルデーニャ建築賞、アマルフィ名誉市民、アマルフィ・マジステル、ARGAN賞など。