縄文の断片から見えてくる
修復家と人類学者が探る修復の迷宮

  • 著者
    古谷 嘉章 著
  • 著者
    石原 道知 著
  • 著者
    堀江 武史 著
  • 出版年月日
    2023年8月
  • ISBN
    978-4-910036-04-5
  • 判型・ページ数
    四六判・248ページ
  • 定価
    本体2000円+税
  • 在庫
    在庫あり
書評掲載情報
2024-1-13 東京新聞・中日新聞 朝刊 読書欄「記者の1冊」

2023-12-16 信濃毎日新聞 朝刊
(信濃毎日新聞(12/16)『縄文の断片(かけら)から見えてくる』)

2023-11-25 毎日新聞 朝刊(池澤夏樹 作家(毎日新聞(11/25)『縄文の断片(かけら)から見えてくる』)

2023-11-19 読売新聞 朝刊(金子拓 東京大学教授・歴史学者(読売新聞(11/19)『縄文の断片(かけら)から見えてくる』)

2023-11-15 西日本新聞 朝刊

2023-10-20 週刊読書人(中村 大 立命館グローバル・イノベーション研究機構准教授、考古学、縄文時代「週刊読書人」(2023年10月20日)

2023-10-08 日本農業新聞
 
2023-09-16 日本経済新聞 朝刊
(日経新聞(9/16)『縄文の断片(かけら)から見えてくる』
   
紹介

はじめて語られる、縄文土器の修復の世界。

修復から考える縄文土器。
熟練の修復家が実際に触れて感じる縄文の技と心と「わからなさ」

一般にはほとんど知られていない縄文土器の修復の迷宮を探る。
土の中から破片が発掘され、修復され、私たちが縄文土器として目にするまでには、いくつもの実に厄介な、意外に身近な問題が存在する。
断片と欠損の意味、文様の繰り返し、修復の介入度合い、修復箇所の判別、完形復元にすると見えなくなるもの、現代人の発想の危うさ……。そもそも「修復とは何のために何をすることなのか」という問題を抱える考古遺物・考古学の迷宮を、縄文土器の修復という営みから、また世界の修復事例から、人類学者と修復家が探究する。

目次

序章 修復の世界への招待 発掘現場の出土品から展覧会の展示品へ/出土したときの国宝土偶/出土品への修復という介入/考古遺物の修復と美術品の修復/修復における自由裁量の幅/出土品、修復家、監修者/結果を形にしなければならない修復という仕事/修復とはそもそも何なのか 第一章 考古遺物の修復の現場から 1 文化財の保存修復とは何か 文化財修復の現場で触れて感じて考える/考古遺物の修復という仕事/文化財保存修復の理念―四つの原則/文化財修復技術者の規定/修理と修復、復元と復原/考古資料の素材の多様さと保存処理―金属資料を例に 2 縄文土器の修復 土器修復の基本方針とその工程/復元部分の取り扱い/縄文土器を見る現代人の眼/意図的な破壊による欠損/破片の行方/欠損部分の復元―文様は繰り返すとはかぎらない/縄文人は文様で遊ぶ?/文様の図と地 3 考古遺物の複製そしてレプリカ 見取りと型取り/現状記録資料としての複製/デジタル技術によるレプリカ作成/レプリカで構成する展示―複製とは何か、本物とは何か/本物かレプリカか―博物館の役割と視覚偏重/触れる複製の可能性/「クローン文化財」という新技術/「本物のレプリカ」/縄文人の心に触れる楽しみ―あえて不完全を残す? 第二章 修復からみた縄文土器の「わからなさ」 1 縄文とともに現代を生きる 「わからなさ」の魅力 2 修復における厄介な問題 修復を行うのは誰か/共繕い/縄文土器修復の概要/修復する度にかたちが変わる/簡単ではない縄文土器の修復 /なぜ破片が「消える」のか 3 「向こう合わせ」の造形 縄文土器に触れて感じる「わからなさ」/写実性のない縄文時代/「向こう合わせ」による非写実性の生成/規範とは何か/縄文土器に見る規範/「現代人の発想」の危うさ/写すのではなく、この世にないものをつくる/触覚を優先する造形思考/素材の先導力/私たちにもできる「向こう合わせ」の造形 4 現れてくるものを受け入れる 「つくること」からかたちが生まれる/非写実性から現れてくるもの/「ないもの」が現れてくる/現れてくるものを待つ 5 縄文土器修復の目指すところ 修復に代わる推定模造/土器修復の理想像 第三章 遺物の修復について人類学者が考える―断片・経年変化・複製・展示 1 修復とは何のために何をすることなのか 遺物の生涯の一コマとしての修復/本章で考察すること 2 断片より完形を偏重すること さまざまな断片化/断片と欠損には意味がある/完形に復することが修復の目的か―芸術品修復との比較 3 経年変化とアンチエイジング 実物も修復品も年をとる/修復における「可逆性」の問題 4 実物をとりまく複数の複製 複製とは何か/修復の役割、複製の役割 /さまざまな複製/マテリアルな複製、デジタルな複製 5 保存だけでなく展示のために 保存のための修復、展示のための修復/触れない本物、触れるレプリカ 6 修復は単品では完結しない 独立したオブジェの幻想/修復におけるモノのネットワークと未完の修復

著者

古谷 嘉章

ふるや よしあき

東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。九州大学名誉教授・特任研究者。文化人類学(主たるフィールドはブラジル)。著書に『異種混淆の近代と人類学―ラテンアメリカのコンタクト・ゾーンから』(人文書院、2001)、『憑依と語り―アフロアマゾニアン宗教の憑依文化』(九州大学出版会、2003)、『縄文ルネサンス―現代社会が発見する新しい縄文』(平凡社、2019)、『人類学的観察のすすめ―物質・モノ・世界』(古小烏舎、2020)、『「物質性」の人類学―世界は物質の流れの中にある』(共編著、同成社、2017)など。

石原 道知

いしはら みちとも

1965年熊本県生まれ。武蔵野美術短大学卒業。考古資料の修復・複製の会社で勤務後、武蔵野文化財修復研究所を設立。東京藝術大学の非常勤講師(材料技術論、埋蔵文化財土器修復を担当)。重要文化財、東山遺跡出土瓦塔瓦堂、道訓前遺跡出土縄文土器、上福岡貝塚出土土器修復。文化財保存修復学会、日本文化財科学会、日本陶磁芸術教育学会、特定非営利活動法人文化財保存支援機構会員。縄文コンテンポラリーアート展(船橋市飛ノ台史跡公園博物館)参加。

堀江 武史

ほりえ たけし

1967年東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒業。文化財修復・複製、縄文遺物と現代美術の展示などを手掛ける府中工房主宰。主な共著、編著に『ひとが優しい博物館―ユニバーサル・ミュージアムの新展開』(共著、青弓社、2016)、『総覧 縄文土器』(共著、アム・プロモーション、2008)、『縄文遺物と現代美術 考古学から生まれるアート』(編著、府中工房、2018)他。