紹介
「二つの民族の中で、私はひょっこり生まれた昆虫でしかなかった。」 昭和3年(1928)、植民地下の南朝鮮・釜山に生まれ育ち、昭和初期の日本、戦争、民族、家族の崩壊、ふるさとの消失を、小さな体全体で受け止め過ごした少年時代。以来、「肉体的望郷」に突き動かされ、日本と朝鮮半島、近代と現代、記憶と記録のはざまをさまよいながら、詩で繋ぎ、小説で語り、新羅凧を作り海峡に揚げ続けた詩人・鈴木召平の遺稿作品集。 (四つの小詩集からなる「最終詩集」と自伝的小説『墓山の凧』他を収録した「小説集」)
目次
〈詩篇(四つの小詩集からなる「最終詩集」)〉 Ⅰ 昭和史幻燈/Ⅱ 草梁洞大成座/Ⅲ 終戦譜/Ⅳ 輪廻半月 〈野史篇〉 Ⅴ 凧の科学/Ⅵ ハイシャンケンキチの沈黙/Ⅶ 焼土史「宮崎宣久」の場合 〈小説篇〉 Ⅷ 赤土と風―外地断章/Ⅸ 北埠頭―ハカタメモランダム/Ⅹ 墓山の凧―肉体的望郷 鈴木召平追悼文集/鈴木召平年譜
著者
鈴木 召平
1928年、朝鮮半島釡山生まれ。福岡市の旧制西南学院中学部卒業。映写技師、舞台照明、デザイナー、古物商等を経験しつつ詩人として活動。福岡県詩人賞(1974年)。「PARNASSIUS」「九州 記録と芸術の会」同人。「新羅凧」 の名人、「凧館」主人としても知られた。代表作に『墓山の凧(肉体的望郷)』(たいまつ社、1979年)、『北埠頭』(葦書房、1983年)等がある。2023年(令和5年)、95歳で死去。